研究概要 |
【目的】大動脈内バルーンパンピング(IABP)による冠動脈への拍動性メカニカルストレスの増強は、冠血管内皮由来の一酸化窒素(EDNO)の産生を高め、EDNO依存性の血流調節を介して心筋血流の空間分布パターンに影響を及ぼすと考えられる。そこで、EDNOの心筋微小循環調節への関与を評価するため、分子血流トレーサを利用した定量デジタルラジオグラフィにより、NO合成阻害時のウサギ心筋微小循環を心内膜側(Endo)と心外膜側(Epi)で計測し、貫壁性に比較検討した。【方法】麻酔下のウサギを開胸・心膜切開し、コントロール群(n=8)、NO合成阻害群(n=8)に分け、NO合成阻害群ではNO合成酵素阻害剤であるNG-Monomethyl-L-arginine(10mg/kg)を静注した。分子血流トレーサとしてトリチウム標識したデスメチルイミプラミン(40μCi)を左房内に投与し、1分後に心停止させた。トレーサの一部は心筋内に潅流され、血流分布に応じて冠毛細血管内皮細胞のα_2受容体と結合する。なお、LNMMA投与によりの大動脈圧は6%上昇し、冠血流速は30%減少した。デジタルラジオグラフィにより、解像度100pixels/mm^2で血流分布を得た。各イメージ毎に隣接する局所血流間の相関CAを求め、局所血流調節の協調性の指標とした。【結果】コントロール群のCAは、Epiに比べてEndoにおいて高値を示した。NO合成阻害によってCAはEndo,Epiともに増加したが、やはりEndoにおいて高値であった。しかし、EndoにおけるCAの上昇はEpiほど顕著ではなかった。【結論】局所血流調節の協調的な働きは、Epiに比してEndoで大きかった。NO合成阻害によって血流調節の協調的な働きは増強したが、EndoではEpiほど増強せず、協調的な働きの予備能がEndoで小さいことが示唆された。
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