大動脈内バルーンパンピング(IABP)においては、心筋仕事量の軽減と拡張期の冠灌流圧増加、さらにポンプ作用による冠循環拍動性の増強による血管拡張因子_一酸化窒素(NO)_の産生増加がもたらされる。しかし、これらの作用の心筋灌流への局所的な影響は明かではない。そこで、IABPの心筋微小循環への関与を評価するため、放射性分子血流トレーサ法と定量デジタルラジオグラフィ(分解能:100pixels/mm^2)を利用して、麻酔下のウサギを対象に、コントロール群、NO合成阻害群、心筋収縮性低下群の各々において左室心筋微小循環を心内膜側(Endo)と心外膜側(Epi)で計測し、以下の結果を得た。 コントロール群:Endoの血流分布はEpiに比べて、全体的には不均一性は高く、微視的には類似性が認められた。また、局所血流相関値から、血流分布がおよそ0.4mmx0.4mmの心筋領域を単位として構築されていること、すなわちこのサイズが機能的血流調節の最小単位であることが示唆された。 NO合成阻害群:LNMMAによるNO産生阻害は、冠血流減少とともにEndo、Epiとも微視的な血流類似性の増強をもたらし、特にEndoにおいて顕著な血流クラスタリングを生成した。これより、NOの冠循環における役割は冠血流量の維持とともに、特に易虚血性を示すEndoにおいて心筋灌流に大域的な偏りが起こらないように血流分配する点にあると考えられた。 心筋収縮性低下群:β_1ブロッカー(atenolol)による負の変力性作用は、Endoでのみ血流類似性を減少させた。これは、Endoの酸素需要低下に基づいた同層における冠細動脈トーヌスのローカルなバランス変化によるものと推定された。
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