大腸癌その他の癌組織に広く発現する、分子量42-46KDaの糖タンパクを認識するヒト型モノクローナル抗体SKlを用いて、今年度は以下のことを明らかとし、発表した。(1)本抗体の認識する抗原は常に一定の細胞に発現しているものではなく、盛んに浸潤、遊走している大腸癌細胞に、高濃度、高頻度に発現され、そうでない細胞には発現は弱い。抗体によりin vitroの浸潤能は抑制されることから、本抗原は大腸癌の浸潤、または遊走能に関与している可能性がある。(Br.J.Cancer)(2)本抗体はin vivoに於いても良好な腫瘍集積性を持ち、ヒト大腸癌移植ヌードラットを用いた場合、腫瘍・血流比は最高8.1と良好であった。5名の大腸癌患者においても、radioimmunoscintigraphyが可能であり、副作用を殆ど示さなかったことから、大腸癌のターゲット療法に利用されうる、と思われた。(Int.J.Jmmunother)(3)精製したSK1抗体を用いて、9名の再発大腸癌患者に対して第一相臨床試験を行なった。投与されたSK1に対する抗イディオタイプ抗体の出現の有無、及び臨床効果について現在結果を解析中である。(4)大腸癌細胞株からcDNA 1ibraryを作成、これをSK1でscreenすることにより、SK1の認識するエピトープを含む20merペプチドを同定した(投稿中)。今後はこのペプチドと、すでに作成してあるマウス由来の3つの抗SK1イディオタイプ抗体のFab部分の分子構造との異同を解析する予定である。また、このペプチドにはHLA-A24結合モチーフを含むことから、T-cellの活性化を惹起するか否か、検討して行きたい。
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