切除不能肝癌に対する肝動脈反復遮断療法は、腫瘍組織の阻血再灌流によって発生する活性酸素の細胞毒性理論に基づく独創的な癌治療法である。局所活性酸素誘導による抗腫瘍効果の機序として、活性酸素によるDNA障害から誘導されるアポトーシスに着目し、腫瘍組織内のアポトーシス誘導因子(TGF-β1、c-myc、ICE、Bax、Fas)および抑制因子(Bcl-2)の発現について多角的に検討中である。 98年度奨励研究においては、肝細胞癌(HCC)の新鮮切除標本を用い、HCC組織におけるFas、Fas Ligand(Fas-L)のmRNA発現をRT-PCR法で検討した。HCC73例のFas、Fas-Lの発現率はFas(+)Fas-L(+)42例(57.5%)、Fas(+)Fas-L(-)13例(16.6%)、Fas(-)Fas-L(+)13例(16.6%)、Fas(-)Fas-L(-)5例(6.8%)であった。Fas、Fas-Lの発現が、直ちにHCCのアポトーシス誘導をもたらすわけではないと考えられ、現在、FAP-1をはじめとするFasの細胞内ドメイン結合蛋白の検討を行っている。
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