研究概要 |
1. 胃癌におけるdThdPase活性と腫瘍内血管新生との関連 切除胃癌42例を対象とし、dThdPase活性を高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)で定量的に測定した。正常胃粘膜部の平均dThdPase活性は49、腫瘍中心部139、腫瘍辺縁部106であり、正常組織に比べて腫瘍組織ではdThdPase活性が有意に高く、さらに腫瘍内では辺縁部よりも中心部で有意に高い値を示した。dThdPase活性が高い症例は腫瘍内血管密度も高い値を示して有意に相関し、dThdPaseの血管新生作用がうかがわれた。組織型でみると分化型でdThdPase活性が高く、静脈侵襲陽性例、肝転移陽性症例で高い値を示した。 2. dThdPase活性とdThdPase蛋白の相関と臨床的意義 切除胃癌101例を対象とし、dThdPase抗体を用いた染色を行った。dThdPaseの酵素活性は蛋白の発現と相関していた。dThdpsae陽性例は陰性例に比べて腫瘍径が大きく、深達度が深く、脈管侵襲陽性例、リンパ節転移陽性例が多く、進行したものが有意に多く認められた。dThdPase陰性例の5年生存率は95%と良好であるのに対して、陽性例では69%と有意に予後不良であった。stage別にみると、stageIII,IVで、dThdPaseによる予後の差がみられた。以上より、胃癌においてdThdPaseは血管新生を誘導し、dThdPase腸性例は侵潤・転移しやすく、予後不良となる傾向がみられた。dThdPaseによる予後の差はstageIII,IVの症例で明らかであり、臨床的にはstageIIIのdThdPase陽性症例で5'-DFURを用いた化学療法の有効性が期待される。
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