雌性ビ-グル犬(n=8)を用いて小腸の2時間温阻血再灌流モデルを作成し、術後12%標準アミノ酸をふくむ高カロリー輸液を行い、以下の結果を得た。 1、生存率:術3日後に腸重積により死亡した1例を除く7例は7日間生存した(7日後に犠牲死させた)。 2、臨床症状:全例軽度の下痢を生じ、7日間で平均13%の体重減少を来した。 3、組織学的所見:小腸粘膜は2時間の温阻血により上皮の脱落が生じ、再灌流1時間後にはcryptに至る壊死が認められた。しかし術3日後には正常構造に復した。 4、消化吸収試験:0.5g/kgのマルトースを十二指腸内に強制注入し、その後2時間の血糖値の上昇度を測定したところ、術3日目では平均16.8mg/dl/hrであったが、術7日後には28.0mg/dl/hrと回復した。 5、血液生化学検査:AST値は再灌流12時間後を最高値として上昇し、その後低下して術7日後にはほぼ正常値に復した。ALP値は再灌流24時間後を最高値として上昇し、以後低下した。CPK値も術12時間後を最高値として上昇し、以後低下した。 以上より、2時間の小腸温阻血再灌流により著明な小腸粘膜障害とこれに伴う肝機能障害が生じることが明らかとなった。今後は、Alanyl-glutamine液を含む高カロリー輸液を行う群を作成し、個々の臓器におけるアミノ酸代謝を検討すると共に、前記項目を測定して両群間での比較を行う予定である。さらに、保存中の小腸粘膜検体および今後作成するモデルの検体を用いて、ポリアミン量やODC活性等を測定し、小腸粘膜の再生の度合いを比較する予定である。
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