研究概要 |
昨年度に引き続き、雌性ビーグル犬を用いて小腸の2時間温阻血再灌流モデルを作成し、術後12%標準アミノ酸をふくむ高カロリー輸液を行った(n=5)。今年度は、初回手術時に肝静脈内、門脈内、内頸静脈内にカテーテルを留置し、それぞれのカテーテルから経時的に採血し、HPLC法によるアミノ酸分析と、門脈内エンドトキシン値の測定を行った。さらに、4℃ヘパリン加乳酸リンゲル液内に24時間浸漬保存した小腸グラフトを用いて自家小腸移植モデルを作成した(n=6)。 その結果、門脈内エンドトキシン値は再灌流6時間後を最高値として上昇した。小腸におけるGLNの吸収率は平均で阻血前11%から2時間温阻血後には4%に低下し、再灌流1時間後にはさらに低下(1%)したが、その後6-12時間後(34%,27%)を最高値として上昇し24時間後(16%)にはほぼ術前値に復した。ALAは逆に小腸から放出され、その放出率の平均は阻血前10%から再灌流後6時間を最高値に上昇(25%)し、その後低下した。BCAA(VAL+LEU+ILEU)は阻血前は小腸で約5%吸収されていたが再灌流6時間後を最高に放出傾向になった。昨年度の結果とあわせて考察すると、本モデルにおける小腸上皮の障害は再灌流2-6時間後に最も大きいが、その頃から12時間後にかけて最も盛んに上皮の再生が生じるためにGLNの需要が高まっているものと考えられる。 一方、自家小腸移植犬は6頭中2頭は36時間、13時間生存したが、他の4頭は腹腔内出血や門脈血栓症で術12時間以内に死亡した。 今後、温阻血モデルにおけるGLN添加栄養のGLN代謝への影響を検討するとともに、自家小腸移植モデルの確立を行う予定である。
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