平成9年度の実験には8-12週齢の雄性ラットを用い、肝移植は鎌田の方法に準じ肝動脈の再建は行わなかった。移植後、1、2、3、5、7、14、28日、および2〜6月後に再開腹、門脈を露出カニュレーション、4%パラフォルムアルデヒド溶液で肝を灌流固定した後、肝十二指腸間膜相当部分を含めて肝を一塊として摘出した。組織標本は、門脈および総胆管吻合部より肝側部分(肝門部)を5mm切り出し、マイクロウェーブ固定した後、4%パラフォルムアルデヒド溶液に浸漬固定、パラフィン包理・薄切した後、抗GAP-43と抗PGP9.5モノクローナル抗体を用いて免疫組織化学染色を行って作成した。 実験結果は、肝門部神経のPGP9.5に対する染色性は移植後の全期間を通して陽性であったのに対して、GAP-43に対する染色性は移植1〜2日目には陰性で、移植2〜3日目に初めて陽性神経の出現が認められた。その後、染色性は移植3〜7日目に最大になったあと、2週以降3ヶ月まで次第に減弱、術後4〜6ヶ月で対照群と同程度になった。 この実験結果から、ラット同所性肝移植モデルでも肝神経の再生が起こることが証明された。すなわち、肝神経の再生は移植直後に始まり、2〜3日で再生神経の軸索が肝門部に到達、その後、再生軸索は肝末梢に向かって延び続け、術後4月までには肝末梢での神経終末の形成が完了することが示唆された。 次年度は、当年度に既に作成した電顕標本を用いて、特に再生軸索の超微形態学的変化について解析する計画である。また、今回の結果から、再生過程にある軸索はグラフト肝固有の神経束を再生経路に選び、その神経束の間隙を縫って末梢側に延びていく過程が示唆されたため、次年度はこの点についても解明する予定である。
|