研究概要 |
(対象および方法)肝切除で得られた癌組織56検体、非癌部組織47検体、肝生検にて得られた肝硬変組織16検体を、MIB-1抗体を一次抗体として、免疫染色を行なった。核が褐色に染色された細胞をKi-67陽性細胞とし、細胞2000個を無作為に光顕下に計測し、そのうちの陽性細胞数を百分率で表し標識率(labeling index,L.I.)とした。(結果)正常肝と比較し、慢性肝炎、肝硬変症で有意にKi-67 L.I.は高値であった。また、肝細胞癌合併症例の非癌部は他の肝疾患より有意に高値を示した。肝細胞癌合併症例の癌部は非癌部と比較し、有意に高値であった。また、以前の門脈圧亢進症手術時と、その後肝細胞癌合併時の非癌部のKi-67 L.I.を比較してみると、肝細胞癌合併時の非癌部のL.I.の方が有意に高値であった。病理組織学的因子と、癌部Ki-67 L.I.では、im陽性の症例では陰性の症例に比べ有意に高値であった。また、vp陽性、fc-inf陽性、aneuploidの症例、低分化の症例で高値を示す傾向を認めた。癌部のKi-67L.I.が10%以下の症例とそれより高値の症例で累積生存率を比較してみると、10%より高値の症例で、有意に累積生存率は不良であった。肝切除術後再発までの期間と癌部Ki-67L.I.では、12カ月以内の短期間に再発した症例では、それ以降に再発した症例に比べ、有意に高値であった。また、肝切除後多発再発を来した症例のKi-67L.I.は単発再発症例より有意に高値を示した。(結語)(1)慢性肝炎、肝硬変症において増殖能の異常亢進が持続した症例では肝癌発癌が高値であり、肝細胞増殖能の亢進が肝発癌の引き金になることが示唆された。(2)癌部のKi-67L.I.が高値の症例ではたとえ切除が可能であっても、術後再発、遠隔転移を来しやすく、術前術後の補助療法が必要と思われ、Ki-67染色は肝細胞癌の予後判定因子として有用と思われた。
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