研究概要 |
血管吻合を施行しない新しい門脈血行再建の可能性を求めるために,静脈グラフトを併用した自己拡張型金属ステントを用いた門脈血行再建について検討してきた.目的として1.手技の確立,安全性の確認 2.血流量の確認,開存率 3.留置したグラフトの壁構造の病理学的判定を行う予定であるが,現時点においては手技の確立の検討を行うのみにとどまっている.血行再建の方法としては採取した静脈グラフトを金属ステントに被覆し固定した後,イントロデューサーを介し腸間膜静脈より切除した門脈断片に誘導,内腔側から刺出させた後,肝側門脈にさし込み肝実質に覆われた門脈内腔にステントを圧着させて血行再建を完成させる.イントロデューサーに収納されたステントは全解放で約30%の全長の短縮を生じて本来の長さの戻るが,静脈グラフトの径によって必ずしもステントの全拡張を生じない.そのため当初全長8cmのステントを採取したが腸間膜静脈側にステント余剰が生じることから全長5cmのステントを採用する必要が生じた.また全長の短縮の率がステントと採取した静脈グラフトとの間に差が存在するため,静脈グラフトを長めに採取使用する必要があるが,門脈内に存在することになる余剰な静脈グラフトが開存率,門脈壁の過形成にいかなる影響を与えることになるかも問題となる考えられ,切除した門脈のの長さに応じた静脈グラフトの長さの決定も今度の新たな課題となった. 本法が従来の血管吻合による門脈血行再建と同様の安全性を得られるか,また肝虚血時間の短縮に寄与するか否かは来年度も継続して行う予定である.
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