研究概要 |
正常細胞にはテロメラーゼ活性はないか、例外的にもあっても極めて弱い.しかし、ヒトガン細胞において多くの場合テロメラーゼ活性があることがわかっている.理論的にはテロメラーゼ活性は細胞1個分に相当する細胞抽出液でも十分に検出できるほど高いと言われている.そこで大腸内視鏡検査の際の下部直腸に貯まった腸管内洗浄液中の細胞のテロメラーゼ活性を測定することにより大腸癌の初期診断の一つの方法として応用することを目的とした.対象は大腸担癌患者16症例と対照として大腸内視鏡検査上異常のなかった10症例とした. 通常の大腸内視鏡検査時と同様にポリエチレングリコール(PEG-ELS)(商品名ニフレック)2lを服用後,大腸内視鏡検査を施行し腸管洗浄液を採取した.採取された腸管洗浄液は2000rpm10分間遠心,peletをPBS液で洗浄撹拌後1100rpm10分間遠心し,peletに1×CHAPS lysis buffer 200μl加えhomoginizeした.30分氷上静置後4℃13000rpm20分間遠心,上清のみを採取し瞬間凍結し測定までの間-80℃で保存した.ONCOR社Telomerase Detection Kitをもちいた,蛋白除去を伴うTRAP(Telomere Repeat Amplification Protocol)Assayを行った.PCRのプロトコールは94℃30秒,60℃30秒,72℃45秒の3Stepにて31サイクルとし,DNA sequancerにより電気泳動を行い,CY-5をラベルとしたTelomerase Ladderを検出,Peakの面積による定量解析により定量化した. 大腸癌患者の腸管洗浄液のテロメラーゼ活性は16例中9例(56.6%)で陽性であった.対照群では10例中1例(10.0%)で陽性であった.大多数の大腸癌細胞でテロメラーゼ活性が発現している事実を考えれば,採取した腸管洗浄液の取扱いや蛋白除去法の工夫により,さらに大腸癌患者の陽性率は向上すると期待でき,大腸癌の初期診断の一つの方法として応用できる可能性が示唆された.
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