研究概要 |
これまでに腹部外科手術後疼痛に対し鍼鎮痛を試み、術後の疼痛を軽減させ鎮痛剤の使用回数を有意に減少させ得ることを報告してきたが、鍼鎮痛の作用機序については未だ完全には明らかにされていない。そこで、内因性Opioid peptidの1つであるβ-EndorphinおよびAdrenocorticotropic Hormone:ACTHを指標に手術侵襲や術後疼痛に対する鍼鎮痛の効果について検討した。鍼鎮痛法は、経穴(左右の合谷、足三里)へ術後3時間目より連続3時間の3Hz鍼通を行った鍼通電群11例、対象群として通電を行わない非通電群11例を設定した。末梢血β-Endorphin,ACTHは、術前、術中と術直後から術後12時間迄の3時間ごとに3mlずつ採血しRadioimmuno assay:RIAにて定量した。その結果、β-Endorphin,ACTHは術中全症例で有意に上昇した。術後は非通電群では時間の経過とともに両者とも術前値に復する傾向が認められたが、鍼通電群では通電によりβ-Endorphinが再び有意に上昇した。一方、術後疼痛に関しては、非通電群では11例中10例で鎮痛剤が使用されたが、鍼通電群では鎮痛剤が使用されたのは、11例中1例のみであった。以上のことから鍼通電はβ-Endorphinを再上昇させ術後疼痛を軽減に導くこと、また、全身麻酔下にあっても手術侵襲は中枢に入力され、ストレス誘発鎮痛が賦活されている可能性が示唆された。
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