研究概要 |
前年度、TNFの副作用を軽減して癌治療への応用を期待すべく、TNFによるapoptosisを抑制するNOに対する阻害薬であるL-NAMEを併用してその効果について検討した。その結果、Ehelich腹水癌細胞に対して、TNF単独投与よりも、iNOS阻害薬併用によりTNF投与量を軽減することが可能であった。しかし、その投与量が正常細胞に対して障害性を発揮せずして抗腫瘍効果を発揮するか否かに関しては不明であるため、本年度、その投与量が正常細胞に如何なる影響をもたらすかに関して検討した。 1)正常細胞としてL-929細胞を用い、LDHなどを指標として細胞障害性を検討したところ、TNF 100.1000ngではきわめて強い障害性が発揮されるため、本実験はTNF 1,10ngにて行うこととした。 2)TNF 1ngにおける細胞障害性は全体の10%であったが、10ngにて38%が障害された。その量におけるEhrlich癌細胞に対する障害性は8%、29%であった。 3)TNFにL-NAME50ng(前年度検討による至適量)を併用すると、その障害性はL-929ではTNF 1ngで変化なし、10ngで45%、Ehrlich癌細胞でTNF 1ngで変化なし、10ngで41%であった。 4)6時間後のDNA-fragmentationはTNF 10ngでL-929では26%、Ehrlich癌細胞では23%、L-NAME併用でL929では36%、Ehrlich癌細胞では33%であった。 5)体内埋め込み型ミニポンプにてin vivo下に本効果について検討した。体重20gのBALG/c miceに3×10^5,5×10^5,7×10^5癌細胞を腹腔内投与し、その生存率を検討したところ、3×10^5の死亡率は25%、5×10^5の死亡率は55%であり、7×10^5は平均4日で100%死亡するため、7×10^5にて本検討を行った。 6)上記TNFおよびL-NAME併用群いずれも上記投与量では生存率に有意差を認めなかった。 今後、その投与量のさらなる検討が必要と思われた。
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