研究概要 |
食道癌患者の末梢血からHA拘束性のKE4CTILを誘導し、大量培養した。このHLA-A24拘束性のCTL細胞株をプローブとして、食道癌細胞株およびヒト末梢血単核球のoDNAライブラリーからの自己抗原遺伝子のスクリーニングを遺伝子発現クローニング法にて実施した結果、KE4CTLにより認識される遺伝子を単離した。この遺伝子の塩基配列を決定したところ、srcファミリーのオンコジーンであり膜結合型のチロシンキナーゼであるlckと完全に一致した。発現ベクターに組み込んだlck遺伝子をVA13細胞に遺伝子導入した結果、遺伝子の用量に応じたC化の生物活性が認められたとともに、lck遺伝子産物はKE4CTLによりHLA-A24拘束性に従って認識される抗原であることが確認された。このCTLにより認識されるlck遺伝子産物のHLA-A24分子との結合ペブチドを解析するために、lckタンパク質のアミノ酸配列からHLA-A24分子のパインディングモチーフを検索し、13個のペプチドを合成した。これらのペプチドをHLA上に提示させたところ、3つのペプチド(HYTNASDGL,TFDYLRSVLおよびDYLRSVLEDF)がCTLにより認識されていた。さらに、これらのlck遺伝子産物由来のペプチドが、in vitroにおいて大腸癌患者の末梢血からHLA-A24およびlck遺伝子産物を発現する大腸癌細胞を認識するペプチド特異的なC化を誘導することを確認した。また、このlck遺伝子産物の発現をモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング法により検討した結果、大腸癌のほとんどの検体において発現していることを確認した。したがって、lck遺伝子産物由来のペプチドが大腸癌に対する癌ワクチンとして作用する可能性が示唆されることから、臨床応用に向けてさらに検討が必要である。
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