研究概要 |
1.11株の転移性大腸癌の分泌するゼラチン分解酵素を解析した結果、すべての株において、65kd、75kdの酵素が、また3株において92kdの酵素がみとめれた。今年度は、これらの酵素について金属依存性、p-aminophenylmercury(II)acetete(APMA)による分子量変化、phorbol myristate acetate(PMA)による分泌量変化等を検討した。その結果、92kdの酵素はMMP-9と同様の性質を示し、大腸癌においてもMMP-9を分泌する細胞の存在が示唆された。一方、65kd、75kdの酵素の金属依存性、APMA非感受性等の性質はMMP-2,-9とは異なり、乳癌細胞で報告されているtype IV collagenを基質とする非MMP-metalloproteinaseと似ていた。このことは、大腸癌の基底膜の破壊における65kd、75kdの酵素の関与を示唆するものであり、更なる性質の検討が必要である。 2.大腸癌の分泌する92kdの酵素は、牛レンズカプセル由来のtype IV collagenを培養基質とした場合、type I collagenの場合より分泌量が増加した。今年度、更にtype IV collagenの精製、抗type IV collagen receptor抗体を用いた分泌抑制の検討等を行ったところ、92kdの酵素の分泌誘導は、type IV collagen結合性の微量成分によることを示唆する結果が得られた。この微量成分は、繊維肉腫細胞の分泌するMMP-2,9の分泌も誘導する。このことから、この成分が基底膜中のtype IV collagenに結合して存在し、癌細胞に働きかけることにより、基底膜の破壊を促進する可能性が考えられる。
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