(目的) 近年、大動脈瘤に対する低侵襲な治療法として、ステントグラフト留置術が臨床導入されたが、いまだ解決すべき問題がある。正確な位置への挿入・固定技術の改善は、ステントグラフト留置術の適応拡大に寄与すると考える。比較的低侵襲の胸腔鏡を併用利用すれば、血管外からステントグラフトの留置固定を確実に行えるのではないかとの着想に至った。本研究では、胸腔鏡から挿入可能で、血管外からステントグラフトの固定を確実にする器具(外固定デバイス)を試作し、雑種成犬を用いた解離性大動脈瘤モデルでその有効性を検討することを計画した。 (平成9年度) 1)解離性大動脈瘤モデルの作成 体重18〜20kgの雑種成犬を用い、胸部下行大動脈に径8mmの人工血管を並列に吻合した。これを解離性大動脈瘤における偽腔と想定した。術後1カ月で人工血管が閉塞しており、モデルとして不適当であった。そこで、人工血管の代わりに、他の実験に供された成犬の上行弓部大動脈を同種グラフトと使用し、術後3カ月まえの開存を確認した。今後、デバイスの評価は、偽腔(並行に吻合された同種グラフト)を閉塞できるかで行う予定としている。 2)外固定デバイスのデザイン・作成 a)シリコン被覆ワイヤーを利用し、ステントグラフトを血管外から絞扼するデバイス、b)磁力によって、ステントグラフトの移動を予防するデバイスの試作を試みているが、a)は現在のところ工作に難渋している。b)に関しては、シート状の磁石を血管外に巻いて、血管内の金属片を留置固定できるか基礎的な実験を行った。現在まで検討したシート状の磁石の磁力は弱く、金属片を血管内に固定することはできなかった。柔軟でより磁力の強い素材を入手する事が今後の課題と考える。平成10年度も継続し、デバイスの試作を行い、解離性大動脈瘤モデルでの検討に進むことを目標にしている。
|