研究概要 |
【方法】手術時に採取した成人12人の健常な大伏在静脈より血管内皮細胞を得た。3代継代培養の後、半数をプログラムフリージングの後、1週間液体窒素保存した(C群)。残りはさらに継代した(F群)。まず、両群の表面抗原・接着分子(HLA-A,B,C,HLA-DR,ICAM-1,LFA-3)の発現を、同種免疫反応で重要な役割を果たすIFN-γの添加の有無でどのように変化するかを検討した。まず同種BPMCと混合培養を用いて、両群の内皮細胞の免疫反応を培養3日目のMTTアッセイ、および培養後3日目および7日目の上清中のインターロイキン(IL)-2,6,8,10を定量することによって検討した。【結果】.IFN-γを加えないで培養すると、両群ともHLA-DRの発現は認められず、表面抗原・接着分子の発現にも両群間で有意差は認められなかった。IFN-γを添加して培養すると、両群でともにHLA-A,B,C,HLA-DR,ICAM-1の発現が有意に上昇した。また、HLA-DR,LFA-3の発現についてはC群の方が有意に上昇していた。2.PBMCとの混合培養では、MTTアッセイで両群の細胞とも免疫刺激能を有し、C群で有意に高いPBMC活性がみられた。また、培養上清中のIL測定では、3日目、7日目ともにIL-6およびLI-8の高い産生が認められ、すべてC群で有意に高値を示した。IL-2は両群間で有意差を認めず、IL-10の産生はいずれにおいても検出されなかった。【考察】ヒト血管内皮細胞は凍結保存を受けることによって、同種免疫活性が増強されることが本実験より示唆された。これには抗原提示能の変化(IFN-γ添加によるHLA-DRおよびLFA-3の発現がF群より有意に高い)、および炎症性サイトカインの産生(混合培養上清中のIL-6,IL-8がF群より有意に高い)が関与するものと推察された。
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