heat shock preconditioningまたはischemic preconditioningによる虚血耐性現象の脳における報告は多いが、今日まで脊髄における報告はみられない。本実験により、脊髄でpreconditioningによる虚血耐性現象が認められれば、今後のさらなる実験的或いは臨床的研究の発展により、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤手術の合併症である対麻痺発生予防の一手段として、有用となる可能性があると考えられる。また、現在のところ、虚血耐性現象とheat shock protein(以下HSP)の関係はまだ十分には解明されていないが、HSPの保護効果が証明されれば、HSPを直接注入、或いは遺伝子導入などにより間接的に導入することで、対麻痺発生予防の一手段となり得る可能性がある。 今回、動物実験にて、preconditioningによる虚血耐性現象が脊髄でもみられるかどうか、また、組織学的にHSPの誘導も有無を検討し、虚血耐性現象との関与を検討した。 実験には兎を用い、麻酔下、whole body hyperthermiaにより、体温を42℃〜43℃まで上昇させ、その後、6時間、12時間、1日、2日、3日、7日後に脊髄を摘出し、Western Blotting法にてHSP70、HSC70を測定、定量化し、HSPの誘導を観察した。 又、兎を用い、whole body hyperthermiaの後、6時間、12時間、1日、2日、3日、7日後に大動脈を遮断し、脊髄虚血モデルを作成した。その24時間、48時間後に対麻痺の発生の有無を観察した。 以上の実験により、脊髄耐性現象の有無と虚血耐性獲得時期を観察し、HSPの出現の有無を検討した。
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