今年度、呼吸筋に誘発した緊張性振動反射が呼吸と胸腔内圧に及ぼす効果とその臨床応用について検討を行った。 昭和大学藤が丘病院胸部心臓血管外科において胸部手術をうけ、本研究の内容と意義を理解し本研究の被検者となることを承諾した症例を対象に次のような方法で研究を行った。 被検者は坐位の状態でマウスピースを通して呼吸をしてもらい、スバイロメーターを用いて呼吸曲線を記録した。胸腔ドレーンを圧トランスジューサ-に接続し、胸腔内圧を呼吸曲線と同時に記録した。シリンダー型振動器を両側の第2肋間胸骨近傍にあて振動刺激を吸息相で投与した。このときの呼吸曲線と胸腔内圧の変化をデータレコーダー(本年度科研費にて購入)に収録し、解析した。 安静呼吸している状態で胸壁に振動刺激を投与すると1回換気量が増加し、呼吸回数が減少し、吸息相での胸腔内圧の陰圧が強まった。このような変化は、振動刺激の投与によりすみやかに出現し、また投与の中止ですみやかにもとの状態に復した。さらにこれらの変化には再現性が認められた。 骨格筋に振動刺激を投与すると反射性にその筋肉は収縮する(緊張性振動反射)。今回の研究結果から、呼吸筋にその機能相で緊張性振動反射を誘発すると筋活動が高まり一回換気量を増やし、胸腔内圧の陰圧を強めていることが示された。このことから胸部手術後、呼吸理学療法の一環として胸壁(呼吸筋)に振動刺激を投与すると肺の再膨張を促進し、無気肺の予防に役立つことが示唆された。
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