肺癌における癌関連遺伝子につき、Fluores cerc in -situ Hybridization(FISH)法で遺伝子のコピー数の変化を検討し、さらにマイクロサテライトマーカーを用いたゲノム不安定性の検討を加えた。 対象は東京医科大学で切除された肺腺癌切除症例で、プローブは以下のP1-DNAプローブを用いた。 :SRC tyrosine kinase familyに属するFGR、二重螺旋RNAで活性化される抑制遺伝子PKR/Mut-Smismatch repair protein関連のMSH2、家族性大腸ポリポ-ジスのAPC/結腸癌関連MCC、およびRetinoblastoma関連Rb1の各プロキシマ-ルプローブ。 中分化型腺癌で、FGR遺伝子に1核あたり6つのシグナルを認める症例が認められ、特異的な遺伝子コピー数の増加、あるいは染色体全体の3倍体への変化が考えられた。またPKR/MSH2のプロキシマ-ルプローブによる染色で、多くの症例で無数の大小顆粒状、点状のシグナルを得、特に分裂核で強い傾向が認められた。肺癌における遺伝子コピー数の増幅の可能性が示唆された。Rb遺伝子、APC/MCC遺伝子では、ともに1核につき2個のシグナルを得、遺伝子コピー数に変化はないと考えられた。 コピー数に変化のみられたFGRの遺伝子座:1p36の近傍のゲノム不安定性を検討した。コピー数の変化していた肺腺癌症例および正常ヒトgenomicDNA各々にマーカーD1S496を用いたPCR分析を行なったが、分子量はいずれも210bpで、この部位のマイクロサテライトDNAの反復配列に変異は認めなかった。 今後、癌抑制遺伝子については、セントロメアプローブとの比較染色でその発現の欠失を、癌遺伝子ではそのコピー数の増幅と近傍のゲノム不安定性との関連を検討する予定である。
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