心筋虚血。再潅流障害による心機能低下の基礎的なメカニズムは非常に複雑であり、解明されていない部分が多い。虚血状態や高熱など色々なストレスにより誘導されるストレス蛋白(heat shock protein)は、虚血に陥って障害を受けた細胞を保護することが知られている。これがストレス応答であるが、1962年にheat shock proteinが発見され、その後25年経ってから核内でヌクレオソームの形成を介助するタンパク質ヌクレオプラスミンが発見された。これにより分子シャペロンという言葉が出てきた。外部からのストレスや、虚血、低栄養、感染、老化などの病的変化や、サイトカン作用などの内部的要因による特殊な状態で分子シャペロンが誘導される。つまり、分子シャペロンの誘導により心筋細胞保護効果が得られることが大いに期待される。 実験的に分子シャペロンを誘導する方法を検討、分子シャペロン誘導がもたらす心筋保護効果について定量的な解析を行った。今までの実験結果から、熱処理の効果が不十分なためか、熱処理による有意なシャペロン増幅の結果は得られていない。今後、条件設定の見直しを含めて、さらに検討を進めていく方針である。 一方、免疫監視機構としてのγδTCR T細胞(T細胞レセプター(TCR)のうちγδを発現しているT細胞)は、自己細胞を排除するものと考えられているが、このγδTCR T細胞を分子シャペロン(heat shock protein)が活性化することがわかってきた。この解明を現在進めている段階である。
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