ラットの左側感覚運動野にカイニン酸を微量注入して誘発される皮質焦点発作モデルを用いて、脳梁離断術の発作に対する影響を検討した。ペントバルビタールで麻酔したラットを定位脳手術装置に固定し、脳梁の前後に当たる頭蓋正中に骨窓を開け、ステンレス管(外径0.6mm)を脳梁の腹側まで刺入した。予め両方のステンレス管に通しておいた1本の5-0ナイロン糸の両端を引っ張って緊張させることで脳梁を離断した。その後、左側感覚運動野にカイニン酸注入用のガニューラを刺入し、両側の感覚運動野と尾状核に深部電極を挿入し、これらをレジンセメントで頭蓋に固定した。手術後7日目にカイニン酸2μg/μlを注入し発作を誘発した。脳梁離断ラット(n=6)でも、離断していないラットと同様に発作重積状態へ進展し、その持続時間や発作の重症度も変わりなかった。しかし、発作重積状態が収束してくると、左側から始まる発作と右側から始まる発作に区別できるようになり、発作重積終了後の発作間歇期放電は左右独立して出現していた。脳梁を離断していないラットでは発作のほとんどは左側から始まっており、発作間歇期放電も左右同期して出現した。また、[^<14>C]2-deoxyglucoseによるautoradiographyでは、まだ実験数が少ないので(n=3)統計学的検討は行なっていないが、発作の波及に伴う高代謝領域の広がりには大きな変化はなく、右側の感覚運動野でも糖代謝は亢進していた。以上のこれまでの実験結果からは、脳梁離断術はカイニン酸誘発皮質焦点発作においては、脳波上も糖代謝の変化からも発作の2次性全般化には影響を与えないと考えられた。そして、皮質焦点発作の2次性全般化の経路には脳梁より脳幹、基底核の方がより重要であると推測された。
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