1. 実験モデル作成:成熟Sprague-Dawleyラット(200-300g)を腹腔内麻酔後、実体顕微鏡下にT10レベルの完全脊髄横断を作成し、同時進行で摘出した胎性14日の同種胎仔胸髄組織をフィブリン糊を用いて宿主脊髄に接着移植した。この胎仔脊髄組織移植モデルはフィブリン糊未使用群、フィブリン糊のみ使用群、塩基性線維芽細胞成長因子を加えたフィブリン糊使用群の3群を作成し、さらにcyclosporin A を5mg/kg/day腹腔内投与群、β-estradiolを5μg/m1/day腹腔内投与群、cyclosporin A とβ-estradiol腹腔内投与群、生理食塩水腹腔内投与群の4群に分け、後肢運動回復・神経再生程度の比較検討を行った。 2. 後肢運動機能回復の解析評価:トレッドミルを用いて歩行訓練を行い、ビデオテープに記録しコンピュータによる後肢運動機能の解析・評価を行ったが、フィブリン糊使用群では未使用群で見られない後肢運動の回復がある。しかし運動回復に塩基性線維芽細胞成長因子およびcyclosporin Aの有無では明らかな有意差はなく、体幹保持歩行はいずれの群においても見られなかった。3.神経再生程度を光学顕微鏡下にpoint-counting stereological analysisを用いて比較検討したが、統計学的には有意な差ではないものの塩基性線維芽細胞成長因子+cyclosporin A使用群で神経再生が促進される傾向が見られ、再生神経線維をさらに伸長させ標的細胞へと導く因子を解明する基礎実験となった。
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