器質性疾患による症候性てんかんが一回大量照射後に高率に軽快することが現在までの臨床研究で明らかとなり、放射線の抗てんかん作用がどのような機序によるものかを明らかにするために、ラット及びマウスのてんかんモデル(ELマウス及びNER:Noda Epileptic Rat)に臨床上、抗てんかん作用の認められる線量を一回で全脳照射(10Gy、20Gy、sham)して(N=30)、発作型、発作頻度を週一回づつ経時的に観察したが、照射後30週までの期間では明らかな発作頻度の減少は認められずに摘出した脳標本でも神経細胞に器質的な変化は生じなかった。本研究の目的は放射線により、てんかん庫性を持つ神経細胞が機能的に抑制を受け、かつ細胞死には至らない線量での生理的変化を明らかにすることであったが、使用したモデルに置いては高線量に置いてもてんかん原性が不活化せず、原発性てんかんを放射線によってコントロールするには症候性てんかんに比してより高線量を必要とする可能性が示唆された。今後はカイニン酸注入モデルなど発作焦点のより明らかなモデルを使用し、焦点に集中したより高線量の照射を行って経時的な発作頻度、及び焦点付近の神経細胞の生理学的変化を観察する予定である。
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