研究概要 |
神経膠芽腫の発生に関わる遺伝子異常に関して、約100例の腫瘍について癌抑制遺伝子であるp53,p16または癌遺伝子であるEGFRの状態を研究した。腫瘍標本よりDNAを抽出し、各遺伝子の変異をPCRをベースにした多形解析、SSCR解析、オートシークエンサーを用いた塩基配列の決定などによって検討した。その結果神経膠芽腫においてはp16の相同的欠失とEGFRの増幅が密接に関連していることを突きとめた。このことは従来p53遺伝子異常を有する神経膠芽腫が若年者に多く比較的予後がいいということに対する一部の説明になると考えられたこの成果はこの分野の専門誌「Brain Pathology」に掲載された(Brain Pathology7:871-875,1997)。 さらに神経膠芽腫の発生に関わる新しい遺伝子(DMBT1)の発見にも関与した。この遺伝子は神経膠芽腫瘍では最も遺伝子異常の頻度が高いと考えられる染色体10番長腕に位置し、神経膠芽腫の癌抑制遺伝子である可能性を有している。この成果もこの分野の専門誌である「Nature Genetics」に掲載された(Nature Genetics 17:32-39,1997)。現時点ではこの新しい遺伝子と既知の癌遺伝子、癌抑制遺伝子の関係に関して検討中である。 また、以上の結果を踏まえた上で、これらの遺伝子的異常を正常化させることにより、神経膠芽腫の異常増殖を抑制する遺伝子治療の開発を検討中である。
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