Differential Display法による差異が確認できなかったため、方法を変更した。下垂体腫瘍にRasの異常が少ないことから、Ras-MAP系の上流にある受容体型チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ遺伝子の機能解析を行う目的で、従来の既知の受容体型チロシンキナーゼ領域のアミノ酸相同性を利用したプライマーを作製し、RT-PCRの遺伝子増幅を行うことにより、その発現プロフィールを調べることにした。正常下垂体、GH3細胞、mGH3細胞からそれぞれ得られたPCR産物をサブクローニングし、それぞれ、塩基配列を決定した。その結果、正常下垂体では、既知のチロシンキナーゼ活性を有する遺伝子のなかでlGF-I、非受容体型チロシンキナーゼ遺伝子ではc-ablが多く発現しているが、この正常パターンに対し、GH3細胞、mGH3細胞ではその発現パターンに変化が見られた。即ち、正常で発現の多いlGF-I受容体は腫瘍化に伴いその発現を減少するが、HGF、VEGF受容体は、発現が増加する。中には、神経発生と密接な関係のあるEph familyも腫瘍増加に伴って発現増加するが、これらのリガンドの下垂体機能については未知である。これらの受容体型、非受容体型チロシンキナーゼ遺伝子の下垂体における正常機能、腫瘍化、悪性化の役割は未解明であり、今後の解明が、in vitro、in vivoで必要である。
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