我々は脳神経外科疾患において、CT、MRIの二次元画像からcomputer graphicsの技法を用いて三次元画像を構築し、仮想的に頭蓋内構造を表現することで、脳室内や頭蓋底における手術シミュレーションシステムの開発を行ってきた。 平成9年度においては、神経内視鏡手術を前提とした脳室系の三次元表示を中心に、surface rendering法の特徴を利用したphotorealisticな画像の作成や、VRML(virtual realitymodeling language)を用いたreal time renderingの応用に関して研究したが、本年度はこれを基盤として顕微鏡下手術のシミュレーションを目標に、頭蓋底の仮想モデルを構築する研究を行った。 頭蓋底を表現するためには頭蓋内構造ばかりでなく、頭蓋骨、頭皮を含めた頭部の情報が全て含まれていることが必須となる。3D-CTは神経や脳表の描出が不充分であり、またMRI画像を用いた三次元再構成では骨の情報が欠落している。そこでcomputer graphicsの技法を用いて、CTから抽出した頭蓋骨の情報とMRIより得た脳表、脳神経、血管系のデータを合致させた三次元仮想頭蓋底モデル(electric skull base)を作製する手法を考案した。これにより、複数の開頭法やアプローチによる視野の差異などを術前に表現することができ、詳細な術前検討が行えるようになった。更には実際の術中視野に近似したsimulation画像の描画が可能なことから、術者のimage trainingという目的には大変有用である。 本手法は手術トレーニングに応用することも良い適応であり、将来operation simulatorへの発展が期待できるものである。
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