研究概要 |
手術摘出を行ない下垂体腺腫と診断された33例についてmatrix metalloproteinases(MMPs)の発現について検討を行った。特に海綿静脈洞への浸潤とMMPsの発現について検討を行なった。海綿静脈洞への腫瘍浸潤は、MRI所見および術中所見より決定し、海綿静脈洞への浸潤が認められるものをinvasive adenomaと診断した。内訳は、non-invasive adenoma 21例、invasive adenoma 12例であった。方法は、各腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い、抗ヒトMMP-1抗体、抗ヒトMMP-9抗体、抗ヒトMMP-3抗体にてABC法による免疫染色を行なった。陽性細胞が全体の10%以上認められる場合をMMP発現陽性とした。結果は全腫瘍では、23/33(67%)にMMP-1,13/33(39%)にMMP-9,9/33(27%)にMMP-3の発現が認められた。non-invasive adenomaとinvasive adenomaの比較では、MMP-9は前者は5/21(24%)、後者では8/12(67%)とinvasive adenomaに有意に発現が認められた。MMP-1は前者は15/21(71%)、後者では8/12(67%)と有意差は認められなかった。また、MMP-3においても前者は6/21(29%)、後者では3/12(25%)と有意差は認められなかった。以上の結果よりMMP-9の分泌が、下垂体腫瘍の海綿静脈洞への浸潤に関与している可能性が示唆された。今後は腫瘍増殖能とMMP-9分泌の腫瘍における関係を検討し、手術組織より腫瘍の再発や浸潤の予測が可能か検討する予定である。
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