研究概要 |
北海道大学医学部第1外科にて乳癌摘出手術を施行された症例246例を対象に選定した。対象症例の術前検査に関する一般情報、血液生化学、併用療法等に関するデータはすでに入手済みである。対象患者の凍結保存血清を用い,全例の血中癌遺伝子erbB-2を栄研化学社製のキットを用いてRIA法にて測定した。結果は陽性例19例(7.8%)で、平均は3.8ng/ml、陽性例の平均は10.9ng/mlであった。ついで、摘出された乳癌原発巣の免疫組織化学染色により、組織中の癌遺伝子erbB-2産物および破骨細胞活性化因子の一つである副甲状腺ホルモン関連ペプチド(N末端)を検索した。陽性対象として、erbB-2遺伝子については血清erbB-2陽性例を選定し、乳癌細胞の細胞膜および細胞質の染色を確認し、染色法を確立した。また、副甲状腺ホルモン関連ペプチドの陽性対象には卵巣癌(clear cell carcinoma)を選定し、染色法を確立させた。対象症例数が当初予定の60例から約4倍の246例に増加したため、免疫組織化学染色は現時点では予定の約60例が終了した状態である。現在、残りの例の染色を早急に進めている。対象症例の経過観察により、現時点では12例の骨転移と20例の死亡を確認した。さらに経過観察を続行し、来年度終了時点でこれらの諸因子が乳癌の骨転移と生命予後に対する危険因子としていかなる位置を占めるのかを判定する。また、乳癌脊椎転移の放射線学的評価は現在、15例について完了しており、脊椎転移形態と椎体圧潰発生の関係を検索する。
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