研究概要 |
当教室で分離樹立した転移能の異なるマウスRCT肉腫高・低肺転移株を用い、実験を行った。RCT肉腫細胞は10%FBS添加RPMI1640培地で培養すると、細胞突起を持つ短紡錘形細胞であり、培養フラスコの底面に付着して増殖する。形態学的には0.2muM、1.0muMカムプトテシンにより細胞は立方形あるいは多角形に変化した。1mM,3mMジブチリルサイクリックAMPにより細胞突起の伸長、N/C比の低下が認められ、電子顕微鏡では微小管の増加が観察された。両者の薬剤では薬剤添加後96時間経過すると細胞には萎縮性変化が認められたが、ビタミンD_3では明らかな形態変化は起こらなかった。細胞増殖曲線を作成するとコントロール群に対して、いずれの薬剤でも細胞増殖の抑制がみられた。とくに3mMジブチリルサイクリックAMPにより強く抑制された(p<0.001)。DNA合成能の測定でもジブチリルサイクリックAMPによりRCT肉腫細胞は最も強く抑制された(p<0.001)。PCバッファー法によるDNAヒストグラムの測定をFACScanフローサイトメトリーにより行った結果、カムプトテシンおよびジブチリルサイクリックAMPによりS期の減少およびA期の増加が認められ、アポトーシスが誘導されていることが強く示唆された。現在、各種薬剤による浸潤能の解析を行っている。次年度はこれらの結果を基に電機泳動法による特異的泳動パターンの検出およびこれらの薬剤による血管透過性の定量を行う予定である。
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