研究概要 |
当教室で分離樹立した転移能の異なるマウスRCT肉腫高・低肺転移株を用い、実験を行った。まずマウス血管内皮細胞(MSE,MLE,MBE)をBoyden chamberに単層培養し、FITC-dextranの透過性を見ることにより血管透過性の定量を行った。その結果、カムプトテシン(0.2mM,1.0mM)、ジブチリルサイクリックAMP(1mM,3mM)、その透過性は有意に低下し(p<0,0001)、濃度依存性であった(10U/ml:p=0,020、100U/ml:p<0.0001)。しかしビタミンDの添加では血管透過性の亢進は認められなかった。次にアガロースゲル電気泳動によるDNAの観察を行った。その結果、カムプトテシンを添加した群では、DNAstep ladderが観察され、アポトーシス誘導が確認された。しかし他の薬剤ではこの所見はなかった。ジブチリルサイクリックAMPによる分化誘導能はすでに報告しているが、アポトーシス誘導能はみられなかった。さらにzymographyの手法を用いてgelatinzeの分離を行い、半定量した結果、コントロール群の細胞に比べて、カムプトテシンによりアポトーシスを起こした細胞、あるいはジブチリルサイクリックAMPにより分化誘導した細胞ではgelatinazeの活性が明らかに低下しており(p<0,001)、浸潤能の低下がみられた。これらの結果はいずれもRCT肉腫高肺転移株で顕著であり、低肺転移株でも同様な結果は認められるものの、差は少なかった。以上の結果からアポトーシスあるいは分化誘導により、RCT肉腫の転移能の抑制が生ずるものと判断された。しかしビタミンDには転移を抑制すると考えられる所見はなかった。
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