研究概要 |
[目的]骨折治癒過程において骨折部間隙にはまず軟骨性仮骨が形成されやがてそれが骨に置換される。強固で安定した骨折仮骨の形成にはこの軟骨から骨へと置換される過程が重要であり、この過程が障害されると偽関節が生じうる。この軟骨-骨置換過程の分子生物学的機序について検討する目的で、この過程では必ず軟骨基質の石灰化が先行しその後に新生骨が形成されるという事実に注目し、石灰化に関連する骨基質蛋白として知られている、オステオネクチン(osteonectin:OSN)、オステオポンチン(osteopontin:OSP)、オステオカルシン(osteocalcin:OSC)の骨折仮骨内軟骨-骨移行部位における遺伝子発現様式について観察した。[方法]マウス肋骨骨折モデルを用い骨折後12日目の仮骨におけるOSN,OSP,OSCの遺伝子発現について、in situ hybridization法を用い検討した。[結果]軟骨-骨置換部位の石灰化軟骨層の細胞においてOSN遺伝子の発現は消失し、逆にOSP遺伝子の発現が誘導されるという結果を得た。また、OSC遺伝子はこの部位での発現を認めなかった。[結論]1.軟骨-骨置換部位の石灰化軟骨層の細胞においてOSN遺伝子の発現は消失し、逆にOSP遺伝子の発現が誘導された。2.OSN,OSP両遺伝子のon-off機構が骨折治癒における軟骨-骨置換過程の分子メカニズムの一つである。3.これらの遺伝子発現機構の異常が偽関節や遷延治癒の一因となり得、またこれらの遺伝子発現をコントロールすることにより軟骨から骨への置換を促進させうる可能性がある。
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