fos遺伝子は、当初、癌遺伝子として発見されたが、近年の研究により、多種の正常細胞でも発現し、核内においてのDNAからRNAへの転写を制御していることがわかってきた.そこで、この遺伝子をトランスジェニックマウスの手法を用いて、生体内で大量に発現させることにより、その役割について解析しようという試みがある.すでに諸家により、数々の異常が報告されており骨腫瘍が自然発症したという報告もある.また、fosが全く発現していないマウスも作成され、それでは大理石病を自然発症することも報告されている.すなわち核内転写因子であるfosが、骨形成に大きく関与していることが強く示唆されるが、新生骨形成を伴う骨折の治癒機転におけるfosの役割についての検索は未だ充分なされていない.そこで、fosを生体内で持続的にかつ、大量に発現しているfosのトランスジェニックマウスを用いて骨折を作成し、その治癒機転を検討することが本研究の目的である。fosトランスジェニックマウスは個体が小さいため、再現性のある骨折を起こすことは困難であったが、特別の骨折器を使用することにより可能となった.治癒過程の各時期での組織標本による検討を行った結果、骨折の治癒過程における仮骨形成は、肉眼上やや過形成の傾向があった.しかし、定量的な解析が未だ不十分であり、また実施可能であった匹数も少ないため、統計学的検索も不可能であった.今後、実施数を増やし、また定量的解析法をついても検討する予定である.
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