平成9年度の研究実績報告書においてラット脊髄圧迫モデルを完成し、動物の行動学的なダメージと脊髄内マイクログリアの出現とに関連があることを報告した。 平成10年度にはこの動物モデルにおいてマイクログリアの数が増加するのみならず、その大半が活性化された免疫系細胞のみを認識するOX-42染色に陽性であることが示され、マイクログリアが活性化されていることが分かった。また、損傷された脊髄組織内でTNF-αなどの組織傷害性の強いサイトカイン含有量が増加していることが判明した。これにより脊髄損傷へのマイクログリア関与の可能性が一層大きくなったと思われる。In Vitroの実験では、脊髄より培養したマイクログリアをエンドトキシンで刺激して、TNF-αの放出を細胞傷害作用の指標として測定した。脊髄より培養したマイクログリアにもTNF-αやnitric oxideなどの組織傷害を起こしうる物質を放出する能力があることが分かった。脳の細胞を用いた研究ではアデノシンがマイクログリアからのTNF-αの放出を抑制することが分かっていたが、本研究で脊髄においてもアデノシンはTNF-αの放出を抑制することが分かり、今後脊髄損傷の治療にもこの物質が使用できる可能性が開けてきた。また、アデノシンのトランスポーター阻害剤としてアデノシンの効果を増強するといわれているpropentofyllineを用いてin vivo及びin vitroでの効果を検討した。In vivoの脊髄損傷モデルではpropentofyllineはマイクログリアの増殖を抑制し、in vitroでの培養マイクログリアを用いた研究ではエンドトキシンにより誘導されるTNF-αやnitric oxide放出をpropentofyllineが抑制することが分かった。
|