1) 我々はヒト骨肉腫における転写調節因子YB-1蛋白の発現と薬剤耐性遺伝子産物、P糖蛋白の発現を免疫組織化学的に検討した。材料は通常型骨肉腫64例とその他の高悪性度骨肉腫5例のホルマリン固定パラフィン包埋切片であり、全てが治療前に得られた生検材料を用いた。免疫組織化学はYB-1にはYB-1蛋白のC末端に対するポリクローナル抗体anti-YBCを、P糖蛋白に対しては、非特異的反応の問題もあり、2種類のモノクローナル抗体JSB-1およびC-219を用いた。またYB-1の発現と増殖能の関係を評価するため、MIB-1(Ki-67抗体)の免疫組織化学染色を行った。骨肉腫の組織においてはYB-1の発現が細胞質のみに発現を認めたものは37例、細胞質と核に発現を認めたものは32例であった。組織亜型では軟骨芽細胞型に9例中8例と高頻度にYB-1の核内発現を認めたが、組織学的悪性度とYB-1の核内発現の間に相関は認められなかった。P糖蛋白の発現は31例に認められ組織亜型別ではやはり軟骨芽細胞型に9例中8例と高頻度に認められた。YB-1発現を核内に認めた32例中23例はP糖蛋白陽性であり両者には有意な相関関係が認められた。MIB-1の染色が可能であった64例での解析ではYB-1発現が核に認められた例のMIB-1indexは細胞質のみに発現を認めたものより有意に高かった。 2) 我々の樹立した骨肉腫のアドリアマイシン耐性株MNNG/HOS/ADR1000(アドリアマイシン1000ng/mlにおける耐性株)およびMG63/ADR1000においてMDRlのmRNAの発現は濃度依存性に確認しており、これらの細胞株におけるYB-1の局在を確認中である。またこれらアドリアマイシン耐性株においてはmultidrug resistant-associated protein(MRP)のmRNAの発現は薬剤耐性に関与していなかった。またこれら細胞株の親株に認められるHGFとそのレセプターc-METmRNAの発現と薬剤耐性度とは相関しなかった。
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