ラット体幹部の真皮・深筋膜間の組織層を検討した。 1.ラット皮下組織の層構造 (1)皮下組織の浅層には、真皮下面に密着する薄い筋肉層が存在した。これは従来より肉様膜pannniculus carnosusとして認識されていた組織層であるが、同層内では明瞭な樹枝状形態を示す4ないし5血行領域が集合して血管網を形成していた。また、筋肉内に分布する神経とその栄養血管も認識された。 (2)皮下組織の深層には、深筋膜直上の薄く粗な筋膜層が今回新たに認識できた。この層は、単に上下の組織層間を埋める疎性結合織ではなく、数本の肋間動静脈神経束を中心とした固有の微細血管網を有していた。その血行形態は、皮下組織浅層のものとは異なり、樹枝状の形態等は認めなかった。皮下脂肪のほとんどはこの層内に存在し、薄い筋膜層内に沈着・蓄積していた。 2.各組織層内の血行形態の変化 各組織層ごとの血管網はその形態により、特徴的な変化を来した。 (1)皮下組織浅層の3血行領域を含む皮弁モデルを新たに考案した。1血管茎とすると、血行領域同士が連携して血流を末梢側に送ろうとする形態変化すなわちlinking phenomenonを観察できた。この変化は皮弁生着部で明らかであった。 (2)皮下組織浅層の血管網は、皮弁モデルの末梢壊死部に一致して増強していた。これは新生血管の増生によるものと考えられた。
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