II型コラーゲン遺伝子の発現は軟骨組織特異的、または発生時期特異的に制御され、これらの発現調節に第1イントロンに存在する100bPのエンハンサーが必要であることが知られている。前年度の研究実績から、軟骨組織の分化過程において、ウサギII型コラーゲン遺伝子の一次転写産物がN-プロペプチド領域で選択的splicingを受けるため、第2エクソンを含むlong formが、軟骨形成能を有する未分化な細胞および非軟骨組織のマーカーになりうることが明らかになった。今回、II型コラーゲンN末端およびC末端プロペプチド領域から構成される蛋白が、本遺伝子の組織特異的発現において、転写因子としてネガティブフィードバック調節をしうるかどうか調べる目的で、第2エクソンをコードするN末端ペプチド(N-PRO)およびC末端プロペプチド(C-PRO)を合成し、その抗体を作製した。これらを用いた免疫染色で、N-PROは胎生期において非軟骨組織にも一過性に広く分布しており、軟骨組織の分化過程に伴い、その局在は細胞質から細胞外マトリックスへと移行していた。一方、C-PROは発生時期との関連はなく、出生後は主に肥大軟骨細胞外マトリックスに局在していた。しかしながら、これらの蛋白はエンハンサー活性を抑制せず、各週齢のウサギ軟骨細胞から抽出した核蛋白とのゲルシフトアッセイでもスーパーシフトはみられなかった。その局在から、おそらくC-PROは内軟骨性骨化に能動的に関与しているが、N-PROの機能は不明で、両ベプチドはともに軟骨組織特異的発現を調節する転写因子として機能していなかった。今後は、one-hybrid法によりウサギ胎児cDNAライブラリからエンハンサ一部分に結合するクローンのスクリーニングを予定している。
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