研究概要 |
(目的)c-fos遺伝子を過剰発現させたトランスジェニックマウスは骨肉腫を発症し,c-fosのジーンターゲティングマウスでは大理石骨病を発症する。このように,破骨細胞の誘導分化にはproto-oncogeneであるc-fosが重要な働きをしていることが判明してきた。そこで我々は,人工股関節周囲模様組織における慢性炎症の持続にproto-oncogeneが関与しているのではないかと考え、人工股関節周囲より採取した膜様組織においてのproto-oncogene c-fosの遺伝子発現,局在について、in situ hybridization法を用いて検索を行い,さらに,破骨細胞の分化を誘導するM-CSF(macrophage colony-stimulating factor)の局在について免疫組織学的に検討を行った。 (結果)1.c-fos m RNAは主にマクロファージ様の細胞,線維芽細胞様の細胞,および多核巨大細胞の細胞質に発現しており,多核の破骨細胞様の細胞への分化につれc-fos遺伝子の発現量は低下していた。2.免疫組織学的検討では,c-fosおよびM-CSF蛋白の局在を検討した。その結果,c-fos蛋白はマクロファージ様の細胞、線維芽細胞様の細胞、および多核巨大細胞に発現しており、c-fos m RNAおよびc-fos蛋白陽性のマクロファージ様の細胞の一部はCD71陽性(GM型マクロファージ)であり、c-fos m RNAおよびc-fos蛋白陽性の線維芽細胞様の細胞の一部はCD14陽性のマクロファージ(M型マクロファージ)であった。一方、M-CSF蛋白も、マクロファージ様の細胞、線維芽細胞様の細胞、および多核巨大細胞に発現しており、特に多核巨大細胞の核に高率に発現しており多核の破骨細胞様の細胞への分化につれM-CSF蛋白の発現量は増加していた。さらにc-fosおよびM-CSF蛋白陽性のマクロファージ様の細胞の一部と多核巨大細胞はTRAP陽性,NSE陽性であった。
|