研究概要 |
慢性関節リウマチや変形性関節症は,関節軟骨の変性によりその機能の低下が病態の深刻性を増す。本実験では、臨床治療に還元すべく,alginate beads systemによる三次元培養法を用いて培養し,関節軟骨細胞及び膝半月細胞成分を分離した後、変性部に生着させて,その組織修復の可能性について検討する。本研究は関節軟骨及び半月板の生態病態の解明を検討すべく,先ず修復の指標としてaggrecanやdecorin、biglycan等のproteoglycanの産生について免疫染色の確認を行った。対象は慢性関節リウマチ人工膝関節置換術に至った15例の残存した膝関節軟骨及び膝半月について検討を行った。これら症例をHE染色により正常部と変性部とに分けて,両方の部分でのプロテオグリカン(PG)とデルマタン硫酸PGの違いについて,各種抗糖質のモノクロナール抗体を用いて免疫染色による検討を行った。結果は,コンドロイチナーゼABC非処理の場合,正常関節軟骨ではPGΔDi-4S,ΔDi-6Sの染色性は極めて弱く,またデルマタン硫酸PGについても同様に染色性は弱かった。これに対してケラタン硫酸PGについては,全層にわたり細胞及び細胞周辺基質に染色性が認められた。一方,変性の強い関節軟骨,膝半月では,変性の強い部分に一致して深層,中間層のみならず表層部に於いてもデルマタン硫酸PGが強く染色された。また,PGΔDi-4S,ΔDi-6Sでは特に変性が強い部分に一致してのみ多少染色されることがあったが,ケラタン硫酸についてはさらに染色性が増強する傾向にあった。これらのことは,以前の報告書に記載した事実を併せて,変性が進んだ部位では,修復する目的か,アグリカンを産生できないためやむを得ずデルマタン硫酸PGを産生し,長く細胞周囲に留まるものと考えられた。この事実は,デルマタン硫酸PGの役割を解明する糸口になるとともに,関節軟骨,膝半月修復再生を論じる点で重要であると思われた。
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