研究概要 |
1.申請者らが同定した新規骨形成タンパク質BMP-3bの機能解明を目的に、リコンビナントタンパク質を調製を試みた。 (1)リコンビナントタンパク質の精製リコンビナントタンパク質をCHO細胞の8リットルの培養上清よりヘパリンセファロース、ConAセファロースにて精製を行った。成熟タンパク質ダイマーには糖付加されておらずConAセファロースには結合しなかった。ConAセファロースに結合するBMP-3bは前駆体タンパク質(前駆体部分に糖付加)と成熟タンパク質とのヘテロダイマーであったので、この前駆体BMP-3bを成熟体にするため、トリプシンにより消化を行った。この精製により最終的に成熟タンパク質として50マイクログラムを得た。 2.リコンビナント標品を用いてBMP-3bのin vitroでの生理活性を検討した。 (1)1.で調製したリコンビナントタンパク質を用いて各種動物細胞におけるBMP-3bの作用を検討した。細胞として骨芽細胞系,上皮細胞系,繊維芽細胞系併せて6種類の細胞にて検討した。その結果、骨芽細胞系細胞においてその増殖に変化させる活性を示した。 3.初代骨芽細胞培養系におけるBMP-3b遺伝子の発現調節の検討を行った。 (1)BMP-3bの遺伝子発現調節を培養細胞系で検討するにあたって、細胞レベルで発現の多い、骨組織,血管,小脳の各種株化および初代培養細胞におけるBMP-3b遺伝子の発現を検討した。その結果、初代頭蓋骨由来骨芽細胞でのみ、その発現が確認できた。その他の株化培養細胞系では、ノーザンブロッティングでの検出感度以下の発現量であった。このことから、本遺伝子は組織レベルあるいは初代培養細胞レベルといった分化レベルの極めて高い状態でのみ発現しており、各細胞の分化の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。 (2)分化,増殖に強く関わっていることが知られている因子の初代骨芽細胞系におけるBMP-3b遺伝子の変化を検討した。本細胞系で増殖促進作用のある、TGF-beta,PDGF,FOSは顕著にBMP-3b遺伝子の発現を抑制した。この因子はいずれも本細胞の骨芽細胞マ-カであるアルカリフォスファターゼ活性を抑制していた。以上のことより、BMP-3b遺伝子は分化状態から増殖状態へ移行するとその発現が抑制されることが明らかになった。この結果は、3-(1)の結果と一致するものである。 今後は上記細胞において、様々な活性測定系で検討しBMP-3bの生理作用を明らかにすると共に、本遺伝子の発現調節をプロモーター活性を測定することにより詳細に検討し、その発現調節機構解明に取り組んで行く予定である。
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