心停止に合併するアシデミアが蘇生後脳障害にどのような影響を及ぼすか依然不明な点が多い。一方最近、虚血性神経細胞死はネクローシスとアポトーシスの2つのパターンを取ることが分かってきている。したがって神経糸細胞のモデルとしてラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞を用い、ネクローシスとアポトーシスそれぞれを誘導し、アシドーシスが各々にどのような影響を及ぼすかを検討した。アポトーシスは培養液から血清を除去し、ネクローシスはiodoacetate(ATP合成阻害薬)を添加し誘導した。平成9年度の研究の結果、pH6.5の中等度アシドーシスは、ネクローシスによる細胞死を抑制する傾向にあったが、アポトーシスによる細胞死ならびにアポトーシス細胞の割合はかえって増大させた。pH5.0の高度アシドーシスはアポトーシスもネクローシスも助長した。平成10年度はその機序につき検討した。 すなわち、アシドーシスがアボトーシスやネクローシスを抑制したり助長したりする機序としてカルシウム動態やエンドヌクレアーゼ活性化が関係している可能性がある。したがって、 1 細胞を蛍光カルシウム指示薬Fura-2で染色後、細胞内カルシウム動態を分光蛍光光度計で測定した。 コントロールのpH7.4ではアポトーシス、ネクローシスそれぞれの誘導により細胞内カルシウムは増加した。pH6.5程度のアシドーシスはネクローシス誘導による細胞内カルシウム増加を抑制したが、pH5.0ではむしろ助長した。一方、アポトーシス誘導時の増加にはアシドーシスは影響しなかった。 2 エンドヌクレアーゼ活性をPlasmidAssay法によりアガロースゲル電気泳動し測定した。 pH7.4ではアポトーシス誘導によりエンドヌクレアーゼ活性は増加した。アシドーシスはこの増加を抑制した。
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