研究概要 |
本年度は主に機器の設定と血管リング(肺動脈,大動脈)の虚血再灌流に対する拡張反応の変化について調べた。 (方法)雄SDラット(9週,体重350-450g)を用いた。虚血再灌流群,コントロール群,sham群の3群に分け,虚血再灌流群は開腹後腸管膜動脈を1時間クランプし解除,解除後2時間おいて肺動脈,大動脈を3mmの血管リングとして摘出した。sham群は開腹はするがクランプはせず,3時間後に血管リングを摘出,コントロール群は麻酔後直ちに血管リングを摘出した。血管リングをEBSS内に吊るし1000mgの張力を懸け,フェニレフリン10-6Mを投与して前収縮させた後アセチルコリン(レセプター依存性),A23187(レセプター非依存性),ニトロプルシド(血管平滑筋への直接作用)を10-9〜10-6M投与した時の拡張反応を測定した。 (結果)1.フェニレフリンに対する収縮反応 肺動脈ではコントロール群で有意に大きかったが虚血再灌流群,sham群に差はなかった。大動脈では3群に差はみられなかった。2.アセチルコリンに対する拡張反応 肺動脈では虚血再灌流群で10^<-7>,10^<-6>M投与にて有意に減弱した。大動脈では3群に差はなかった。3.A23187に対する拡張反応 肺動脈では虚血再灌流群で10^<-7>,10^<-6>M投与にて有意に減弱した。大動脈では3群に差はなかった。4.ニトロプルシドに対する拡張反応 肺動脈,大動脈共に3群で差はみられなかった。 (まとめ)以上のように虚血再灌流群で肺動脈血管内皮細胞由来の拡張反応が減弱していることが分かったが,大動脈では同様の結果にならなかった。今後PARS阻害薬(Benzamide)を用いてこの肺動脈の拡張反応が改善されるかどうか,また血管リング内のNAD濃度,肺組織内のMPO活性を各群で測定する予定である。
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