研究実施計画に記したように伝達関数解析を用い、健常成人で星状神経節ブロック後の呼吸から心拍への影響を調べた。以前よりわれわれはこの手法を用いて研究を行っていたので研究方法には問題がなかった。結果については予測と反して高周波数領域における伝達関数振幅の減少といった迷走神経遮断状態、あるいは低周波数領域における振幅の減少といった交感神経遮断状態、あるいは変化なしと様々な反応を見せ、統計的には有意な変化とはならなかった。この原因としては(1)星状神経ブロックが完全でなかった可能性(2)他の自行神経活動による代償の可能性(3)意識があるため手技に対する恐怖感の影響の可能性などが考えられる。さらに高濃度の局所麻酔薬でブロックをおこなう必要があるかもしれない。また、伝達関数振幅の変化と血圧、心拍数変化の傾向にも特に関連は認められなかった。われわれは星状神経ブロックという交感神経ブロック時に逆脱的に血圧上昇をきたす症例があることに着目し、そのメカニズムの解明の一助として今回の硫究を行ったが、この点についても例えば隣接する迷走神経ブロックなどの可能性は低く、その他の機序によるところが多きいのではないかと考えられた。
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