平成10年度においては、ラット摘出大動脈を用い、血管の等尺性収縮の測定、放射性同位元素(^<45>Ca^<2+>)によるトレーサー実験、およびパッチクランプ法による電気生理実験により、揮発性麻酔薬によるカルシウム流入の変化を研究した。すべての実験を、電位依存性カルシウムチャネルの影響を除外するため、ニフェジピンまたはベラパミルの存在下で行った。 揮発性麻酔薬のうち、イソフルレンについては、これが受容体作動性カルシウムチャネルを活性化することを平成9年度にすでに確認し報告したが、平成10年度においては収縮測定およびトレーサー実験により、ハロタンについても検討を加えた。その結果、ハロタンも同様に血管平滑筋の収縮を増強させることが明らかになった。しかし、ハロタンはイソフルレンと異なり、細胞内貯蔵カルシウムの放出促進作用があることが知られているため、ハロタンによる収縮をカルシウム流入と放出の二面から分析した。その結果、2%以下の濃度では受容体作動性カルシウムチャネルからの流入が、4%では貯蔵カルシウムの放出が、それぞれハロタンによる収縮において主な役割を果たしていることが示唆された。ハロタンによる血管収縮にはカルシウム放出だけでなく、カルシウム流入も関与しており、この2つが有効濃度から見て全く別のメカニズムによるいう知見は全く新しいものである。この結果を、現在Anesthesiologygyに投稿中である。
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