研究概要 |
1.低酸素による細胞障害の検討 初代培養肝細胞を好気的条件および嫌気的条件で培養し,LDH放出量から細胞障害の程度を検討した.2時間以内では両条件ともLDH放出量に差はなかったが,2時間以上では嫌気的条件でLDH放出量が有意に増加した. 2.低酸素によるグルコース放出の検討 (1)糖新生の関与:グリコーゲンをほとんど枯渇させた培養肝細胞を作成し,等新生の基質としてフルクトースを添加し,好気的条件および嫌気的条件で30分間培養し,放出されたグルコース量を比較した.好気的条件と比較して,嫌気的条件ではグルコース放出が有意に抑制されたため,低酸素による肝細胞からのグルコース放出への等新生の関与は少ないと推察された. (2)グリコーゲン分解の関与:グリコーゲンを多く含有する培養肝細胞を作成し,糖,アミノ酸など糖新生の基質を含有しない培養溶液を用い,好気的条件および嫌気的条件で30分間培養し,放出されたグルコース量を比較した.嫌気的条件では好気的条件と比較してグルコース放出が有意に増加したため,低酸素による肝細胞からのグルコース放出にはグリコーゲン分解が関与していると考えられた. (3)細胞外カルシウムの影響:グリコーゲンを多く含有する培養肝細胞を通常の培養液あるいは細胞外カルシウムをキレートした培養液を用い,嫌気的条件で30分間および1時間培養した.30分間の培養では細胞外カルシウムのキレートにより肝細胞からのグルコース放出は抑制されなかったが,1時間の培養では有意に抑制された.また,種々の電位依存性カルシウム拮抗剤では低酸素による肝細胞からのグルコース放出は抑制されなかった。 3.まとめ 2時間以内の低酸素曝露による肝細胞からのグルコース放出には肝細胞障害の影響はなく,グルコース放出は主として肝細胞のグリコーゲン分解によるものであり,グリコーゲン分解には細胞外カルシウムの流入が一部に関与していると推察された.
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