研究概要 |
本研究はプロポフォールのアセチルコリン遊離に対する影響を微小透析法を用いて調べるとともに、GABA_A受容体拮抗薬投与がアセチルコリン遊離をどう修飾するかを調べ、in vivoでプロポフォールのGABA_A受容体に対する作用を調べるものである。 SDラットを用い、麻酔下に脳定位固定装置にて右前頭皮質、海馬、線条体に透析用プローブのガイドカニューレを挿入した。手術48時間以後にプローブを挿入し、10μMエゼリン加人工脳脊髄液を流速2.0μl/minで潅流し、アセチルコリン基礎遊離量が安定した120分後に、20分毎のサンプリングを開始した。基礎遊離量として3サンプル採取後、プロポフォール(25,50mg/kg)を腹腔内投与した。サンプル内のアセチルコリンを固定化酵素付HPLC-ECDで測定した。測定結果は基礎遊離量に対する%で表わした。 薬剤投与前のアセチルコリン基礎遊離量は、前頭皮質0.93±0.15pmol、海馬1.50±0.38pmol、線条体15.15±1.31pmolであった。プロポフォール25,50mg/kg i.p.は、ラット前頭皮質ではアセチルコリン遊離をそれぞれ基礎遊離量の30.9%,15.8%に減少させ、海馬ではそれぞれ49.0%,28.4%に減少させた。プロポフォール25mg/kg i.p.はラット線条体アセチルコリン遊離に有意な変化を与えず、50mg/kg i.p.は基礎遊離量の80.9%に減少させた。 線条体は大脳皮質の広範な領域から大脳基底核への入力部位であり、運動機能、特に錯体外路系の発現や制御に重要な役割を果たしている。アセチルコリンは線条体内部の介在ニューロンの伝達物質であり、プロポフォールによる遊離抑制が線条体で選択的に軽度であったことは臨床的に協調運動の回復が速いことと関連があると考えられた。
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