今回の一連の研究により一過性の軽度の脳虚血において、それを反復することでいわゆる遅発性細胞死が広範囲にわたってみとめられることを見いだした。具体的にはgerbilにおいて5分間の脳虚血状態を3時間間隔にて4回反復した後には、大脳皮質、視床、線条体、海馬と広範囲にわたり神経細胞死をみとめ、かつ大脳皮質、視床、線条体においては神経細胞死が典型的なアポトーシス形態を示すことを見いだした。しかしながら、視床下部、脳幹においては生命維持に重要な機能をつかさどると考えられる神経細胞が低酸素に対して、著しい抵抗性をしめすことがわかった。脳細胞は低酸素状態によりすべての細胞が同じように障害されるわけでなくしかも細胞群により障害が認められる時期が異なるとされてきたが、短時間の反復虚血による神経細胞死が遅発性のアポトーシスの機序に関連しておこりうること考えられることから脳蘇生を行いうる可能性がある。虚血後脳蘇生の目的にて低体温による脳保護効果につき引き続き検討中であるが、反復虚血後においても低体温による脳保護効果が示唆される所見をつかんでいる。 また、反復虚血後も視床下部、脳幹においては神経細胞が遅発性のアポトーシスの所見をみとめなかったが、神経内分泌機能を視床下部室傍核の神経細胞におけるオキシトシン、及びバソプレッシンの免疫組織化学にて検討したところ、これら下垂体後葉ホルモン分泌細胞には形態学上の変化が見られず低酸素状態にに対して著しい抵抗性がみとめられた。
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