研究概要 |
敗血症に伴う臓器不全、中でも肝不全の発生についてチトクロームP450(以下P450)の点から検討を行った。敗血症の際にはP450活性の低下によってミダゾラムやリドカインの薬物動態が大きく変化することから、平成9年度はこれらの薬物動態に影響を与える因子について検討した。その結果,リドカインについては、P450分子種抗体を用いたイムノブロットから、代謝産物であるモノエチルグリシンキシリダイドおよび3-水酸化リドカインの血中濃度は、各々P4503A4、P4502D6の活性に比例することが明らかになった(Nakamoto T.Drug Metab Dispos)。次にin vitroでミダゾラムと肝ミクロゾームを反応させたところ、代表的代謝産物として1'-水酸化ミダゾラムが生ずることが明らかになり、遺伝子発現によって作成したP450を用いた研究で、P4503A4とP4503A5の両方がミダゾラムの代謝に関与することが判明した。また、ミダゾラムの代謝はフェンタニールによって競合阻害を受けることが明らかになった(Oda Y.1998 Annual Meeting,American Society of Anesthesiologistで発表予定)。次に手術を受ける健康成人にミダゾラムを静脈内投与して経時的に採血して血中濃度を求めたところ、従来の報告と同様の薬物動態パラメーターが得られた。フェンタニールを前もって投与することにより、ミダゾラムの排泄半減期、クリアランスは有意に低下することが判明した。従って生体内においても、ミダゾラムの代謝にはP4503Aが関与していることが示され、P4503Aが関与する薬物によってミダゾラムの代謝が変化することが判明した(Hase I.Br J Anaesth).平成10年度以降は、実際にラットにリポポリサッカライドを投与して敗血症モデルを作成し、これらのラットから肝ミクロゾームを得てP450の解析及びP450mRNAの解析を行う予定である。
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