ペントバルビタール麻酔犬の左肺下葉(LLL)を、別の犬(ドナー犬)の股静脈血を用いて一定流量で灌流する犬分離肺循環回路を作成した。LLL肺動静脈に灌流用および圧測定用のcatheterを留置し、ドナー犬の股静脈血を一定流量でLLL肺動脈に送血し、LLL肺静脈からドナー犬の外頚静脈に返血した。平成8年度、本研究モデルにおいて、血小板活性化因子(PAF)により安定した肺高血圧状態を作成できた。敗血症性ARDSにおいてはPAFの他にproinflammatory cytokineであるTNF-αがkey mediatorとして重要であるので、今回、同研究モデルを用いてTNF-αによる肺循環動態の変化を観察した。また、これらのmediatorによる肺高血圧に対して5-80ppmのNO吸入の効果について検討した。 平成8年度、RAFによる肺高血圧に対して吸入NOはすべての濃度において肺血管抵抗を有意に減じたが、NO吸入濃度に濃度依存性を認めなかったことを報告した。今回本研究モデルにおいて、PAF同様に、TNF-αにより安定した肺高血圧状態を作成することが可能であった。 現在、TNF-αによる肺高血圧状態に対するNO吸入の効果ならびにその代謝に関して検討中である。
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