平成9年度では、潅流摘出心標本(Working heart model)の完成とラット敗血症モデル(Cecal Ligation and perforation Model;CLP)を用いて吸入麻酔薬のHyperdynamic Sepsisにおける心筋への影響をWorking heart modelで検討することを目的とした。 敗血症心筋を用いたWorking heart modelは手技面ならびに、設備面においても確立され、代表的吸入麻酔薬であるSevofluraneとCLPラット心筋との相互作用の検討を進めている。方法としては、ラットをCLP群と開腹手術のみを施行した(Sham)群に分け、Sevoflurane曝露の影響、虚血-再潅流後の心筋収縮力、コンプライアンス等の検討を行っている。現時点で示唆されていることは、Sham群心筋に比べCLP心筋では収縮力が低下し、かつSevofluraneが収縮力低下を助長する。CLP心筋では、Sham群に比べ虚血-再潅流後の収縮力低下は軽度で、Sevofluraneは両群において虚血-再潅流後の収縮力低下を抑制する効果があると言うことである。 現在まで、敗血症心筋に対する吸入麻酔薬の効果を検討した報告はない。平成10年度では、Working heart modelでの心機能の検討を進めると同時に心筋のエネルギー代謝の変化や、心筋障害の程度に対する生化学的検討を行う。
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